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香川県高松市の心療内科・精神科。全人クリニックです。

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香川県高松市の心療内科 全人クリニック

新規抗うつ薬の功罪Personal Colum

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)は国内では1999年に『デプロメール』『ルボックス』、2000年に『パキシル』、2006年に『ジェイゾロフト』、2011年に『レクサプロ』の5剤が販売されました。またSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は2000年に『トレドミン』、2010年に『サインバルタ』の2剤が、Nassa(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬)は2009年に『リフレックス』『レメロン』の2剤が販売され、今後も新規抗うつ薬の販売が予定されています。従来の抗うつ薬に比べ、低血圧や口の渇き、便秘などの強い副作用が少なく、今では抗うつ薬の半数以上のシェアを占めるといわれています。製薬会社のPRもあり心療内科、精神科に限らず、内科や脳外科、整形外科などの身体科で処方されることも多くなりました。また、うつ病の診断はICD-10やDSM-Ⅳなどの診断基準により簡便化され、うつ病の診断が増加する一因となりました。こうした社会的風潮を背景に、以前よりもうつ病の治療を受けやすくなった点では新規抗うつ薬の功績とも言えるでしょう。

 しかし販売開始から13年経過した今、新規抗うつ薬の罪過が徐々に表面化しつつあります。それは「うつ病治療の迷走化」です。うつ病の診断基準は医療コラムでも記載していますが、単純に気分の落ち込みがあるかないかで症状の有無を判断するわけではありません。症状がうつ病の水準にあるか否かという程度を判断するには十分な問診が必要であり、正確な診断のためには複数回の面接や心理テストが必要な場合もあります。病的水準にはない「うつ状態」や他疾患による二次的な「うつ状態」、躁うつ病のうつ状態をうつ病と診断し、即SSRI処方という薬物療法が行われることが増えています。その結果、副作用に苦しんだり、躁状態となって浪費をしたり怒りっぽくなる、認知症の方の徘徊や暴言・暴力が増えたなどの事例が後を絶ちません。また抗うつ薬により衝動性のコントロールが悪くなり自殺を誘発する場合もあるといわれており、本来中止するべき状況にあって漫然と投薬が続いている事例をみることもよくあります。

 新規抗うつ薬そのものは、多くの人から支持され有用な薬物であることは明らかでしょう。問題は専門外の医師に使用を促した製薬メーカーとその内容を鵜呑みにし安易に処方した医師(当然専門医も自戒するべきでしょう)にあるように思います。服用する際には専門医の正確な診断と症状の評価、計画的な薬物療法が必須であり、やる気の出る万能薬のような過信は禁物のように考えます。

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